旅の化石-山本正之

ローカル電車に 揺られて着いたのは

卵を孵す 鳥の巣の上だった

朝日昇って 葉っぱに露しのび

夕陽沈んで 沢のさゆる幸

帽子ななめに 年老いた発掘家が

粘土ナイフで 自分を削り出す

あいつ変人 今の世の世捨て人

それでも水筒に たくわえた夢の汗

コン コン コン ひとつずつあらわれる

ラ ラ ラ 古い風の通り道

ああ人間の ああ鳴き声に

火が燃えた 水がゆれた 旅の化石

今生きてる あの部屋の情景が

洞窟の壁に 描かれていたよ

牛を追いかけ 荒野に槍を放つ

それはあしたの 私の影だった

きっと飛んでた 氷河期の空の上

宇宙人だと 天に指をさされ

あいつあぶない 次の世の世迷人

それでも草原に書き続けた夢暦

コン コン コン ひとつずつあらわれる

ラ ラ ラ 遠い時の帰り道

ああ人間の ああ行く先に

木が笑う 土が黙る 旅の化石

死んだその日に 夜を飾る星になり

南に流れ どこかの島に落ちる

波に解かされ 海流に色めいて

陸に上がって 河を恋ゆる貝

帽子まっすぐ うら若き運転手

光る呼子で 自分を探り出す

あいつ聖人 果ての世の世暮人

それでものど笛に たずさえた夢の蜜

コン コン コン ひとつずつあらわれる

ラ ラ ラ 古い風の通り道

ああ人間よ ああ丘の上

荷が重い 胸がきしむ 旅の化石

アンモナイトと エスカルゴとカタツムリ

雨降る庭に 歴史とうずくまる

ぬり絵 ロボット 青いガラス玉

幾重の断層に 浮き立つ世界地図

急行列車に 揺られて着いたのは

ダイヤグラムの 時刻の数秒か

あいつ宛てない 後の世の世成人

それでも鞄に かくし持つ夢草紙

コン コン コン ひとつずつあらわれる

ラ ラ ラ 遠い時の帰り道

ああ人間が ああ寄せるほど

地が割れる 岩が動く 旅の化石

コン コン コン ひとつずつあらわれる

ラ ラ ラ 古い風の通り道

ああ人間の ああ鳴き声に

火が燃える 水がゆれる 旅の化石

発売日:1993-12-21

歌手:山本正之

作詞:山本正之

作曲:山本正之