なんどめかの春-神谷明

橋のたもとを春は包んで

人待ち顔の少女が揺れる

擬宝珠(ぎぼし)にうつす 加茂川のいろ

水は流れて 時は流れて

あれはゆく春 遠い夕暮

何も知らない まっしろな二人

行くあてもなく 橋に並んだ

水はやさしい 歌を歌った

四条あたりの人のにぎわい

灯(ともしび)さえも なにやらうれしく

そっと握った 手がふるえてた

水はしずかに 見て見ないふり

あんなちいさな恋がちぎれる

人のなさけの 薄べにいろに

春を嘆いて まだひとり旅

水はつめたく まぶたはあつく

恋というには あんまり辛(つら)く

愛というには まだあどけない

悔いだけ残る 春の思い出

水は流れて 橋は暮れゆく

手すりの傷も あの日のままで

胸に突き刺す 夢の確かさ

思い出ひとつ 橋にあずけて

鐘が聞こえる 泣けとばかりに

水は流れて 人は去りゆく

水は流れて 時は流れて

水は流れて 鐘の音(ね)ひびく

水は流れて また春がゆく

発売日:1995-07-21

歌手:神谷明

作詞:海野洋司

作曲:竹尾智晴